スラッシュドット ジャパン | Linuxを使わない5つの理由
antiunity曰く、"「Linuxを使わない5つの理由」という記事が本家で紹介されていた。肝心の理由は、以下の通り。
1. Linuxはややこしすぎる
2. Linuxはセットアップが骨だ
3. アプリケーションが足りない
4. secureでない
5. Linuxは高い
「一体どういうことだ?!」と思うものもあったが、読めば納得はできる。それなりに笑える。"
私の場合、この「Linux」という文字列を「Windows」という文字列に置き換えて頂ければそのままWindowsを使ない理由となります。
Linuxを使わない理由というのは人それぞれあるでしょうし、その他にも多くの人にして共通して言える理由もあると思うのですが、ここで挙がっている理由のうちほとんどが的外れだと思います。まあ意見にバイアスがかかっているんでしょうけどねぇ…。
なんで意見が偏向するかというと、これもまあWindowsアンチかつLinuxerのWindows語りと同じくLinuxアンチかつWindowzerのLinux語りなんじゃないか…というのは言いすぎですが、多かれ少なかれ「Windowsを主体として考え、Linuxを奇異なるものとして見てる」という部分はあるでしょう。なんでかっていうと、Linuxはどう足掻こうが非標準なOSに変りないわけです。もちろんサーバー用途では勝利を収めたOSとそろそろ言ってもいい頃だとは思うのですが、個人利用の範疇ではどうしても知名度や認知度、あるいは一般性が問題になる。極論で言えば最初からパソコンに入ってない事が最も大きな問題であると言えます。正直OSのインストールの手間ではパッケージ版(またはOEM版)のWindowsをインストールするよりも、最近のモダンのLinuxディストリビューションの方がインストールにかかる手間も時間も少ないし操作も簡単です。
一応言っておきますが、「インストール=必要なファイルをHDにコピーするだけ」ならどっちも大差ないのですが問題は「使えるようになるまで=デバイスドライバの設定、環境設定」を含めて「OSのインストール」と定義します。
で、私なりに幾つかLinuxが使われない理由を考えてみます。まずはWindowsとLinuxにかかる手間の比較から入ります。
先程最も大きな問題としたパソコンに最初から入ってないという部分なんですが、Windowsの場合も「最初から入ってない場合」というのが少ないですが存在します。例えばOS無しモデルのPCを買った場合、自作で組み上げた場合、中古でOS無しを買った場合(あるいはOEM版Windows付属)を買った場合です。つまりはリカバリ付き且つリカバリ済みのメーカー製PCを買ってない場合です。この場合こそ前述の面倒な手間が出てきます。この手間が非常に大きく、自分でハードウェア構成を細かく把握できておらず、デバイスドライバを探し出せない場合は真っ当に稼働させる事すらできません。まあそこまで無知であれば何のOS使っても同じですが。
Linuxの場合、自動認識ツールによって大抵のデバイス(独自機構を備えたアレゲデバイスでない限り)は認識しますし動きます。この点は昔と大きく変りました(そして、未だに認知されていない部分でもあります)。もし認識しない(ドライバが入ってない)場合でも、内蔵デバイス(ボード類)であればlspciで何が入っているかわかりますし、外付け系のデバイスであればdmesgを見ればわかります。認識(動作)しない状態であってもベンダとデバイス名くらいはわかります。よってドライバが存在しているかどうか、そしてどこにあるのかを調べるのは簡単です。前述の括弧内に書きましたが、特殊なデバイスの場合はドライバが存在しない事もありますので、万能かつ万全ではありません。
Windowsの場合、古いデバイスでない限りはドライバは大抵の場合存在します。まあこれも必ずとは言えませんが…例えばSony製PCのデバイスドライバを全てネット上から手に入れる事は出来ません(不可能ではありませんがライセンス違反、あるいは法に触れます)。無論Sony製に限らず何のデバイスが認識できなくて、何処のメーカーの何のドライバが必要かをきちんと知っていないとドライバの入手は非常に困難で、しかもWindowsはそれを知るための手助けはしてくれません。せいぜい「イーサネットコントローラー」とか「マルチメディアオーディオデバイス」とかいう形で認識してくれれば良い方で、困るのが「不明なデバイス」として認識してしまう事です。Windows単体ではベンダ情報は(見て簡単に理解できる形では)出してくれません。そこらへんはユーザーの努力と根性に委ねられています。当然ながら使えなきゃ困る場合は必死こいて探すわけですが、その手間がデカい。場合によっては数時間、数日かけてドライバ探しとインストールに追われ、それが終ったと思えば今度は環境設定、次にソフトのインストールと設定とやらなきゃいけない事は多いです。Windowsのインストールが楽と大見得きって言えるのはメーカー製PC付属のリカバリディスクからリカバリをかけるときのみです。
さて、今少し触れましたがソフトウェアのインストールとその後の管理の問題があります。Windowsではユーザーが追加したサードパーティ製ソフトのインストールとアンイストールの情報の管理はしてくれますがバージョン管理まではしてくれません(記録には残されますが、それだけです)。Windowsアップデート管理できる範囲、つまりはMS謹製のソフト(Officeとかのマイナーチェンジ)やOS付属のソフトに関しては管理できますが、それは極々小さな部分です。Linuxの場合は大抵ソフトのインストールはパッケージ管理システムを通して行います。パッケージ管理システムが存在しない(あるいは小規模な機能しかない)ものもありますが、今となっては例外的です。パッケージ管理システムのおかげで大抵必要なものは揃い、管理の枠を外れたところでのソフトのインストールを行なうケースは稀(あっても余裕で把握できる程度)で問題にはならないでしょう。細かいバージョン管理も出来てアップデートへの追従も楽です。ソフト間の依存関係の解決や、それらのバージョン管理が一括して行なえる点としては非常に優位だと思います。無論インストールの手間もコマンド一発(またはクリック数回)で出来るため非常に少ない。ちなみに設定にかかる手間は物によってまちまちなため比較はできません。
正直いって、どっちが楽かと言えばLinuxだとハッキリ言えますが、それは私がオープンソース界隈にあるソフトウェアに関する情報を持っているから、そしてLinuxの使用経験があるからであって、「Windowsは使った事があるが、Linuxとその上で動くソフトに関して何の情報も知識もない」という人にとっては、見た事も行った事もない異世界に何の予備知識もなく飛び込むのと大差ないわけで、そんな世界でいきなり自由に生活できるかと言えばはっきり言って不可能。まあこれはWindowsにも言える事で初めて使うのにいきなり使いこなせるかと言えば同じく不可能。そこまで人間に優しいOSなんてのは地球上に存在しません。
Windowsにすっかり慣れた身では、Linuxを使ったところですぐには便利に感じないでしょうし、それどころかWindowsとの違い(善し悪しと言えない部分であっても)が問題になり「違う事は悪しき事」になっちゃったり。当然逆も言えるわけですがネイティブなLinuxerなんて非常に稀でしょうから、立場的にはLinuxはいつも悪い。だって大抵の人はWindowsユーザーで、今のLinuxerだって大抵はWindowsユーザーだった人、あるいはMacユーザーだった人で、ほとんどの場合は他のOSから流れてきた人(あるは往き来している人)でLinuxコミュニティは構成されています。そんなわけで、中からも外からも「元に使っていたOSと常に比較し、それに近付けようとする」勢力がいるわけで、私の嫌いな「LinuxのWindows化」が進むわけです。一見Linuxを愛してやまないように見えても、Windowsとの違う部分を見付けては「ここは良くない」と思ってしまう人もいるわけです。根底にあるOS観がWindows主体である人が圧倒的に多い、コミュニティの中にしても外にしてもです。まあ事実上標準なOSですから仕方のない事ですが。
そんなわけで、単純にLinuxを使わない理由を纏めると「Windowsじゃないから」とか「Windowsと違うから」でしょうよ。Windowsとほぼ同じにすればWindowsを使うわけですし、こういった意見を全て取り入れるのは自滅への道でしょうね。開発者の中にもWindowsとの違いを安易に悪だと思ってしまう人もよく見受けられます。標準化を推し進めるのいいのですが、なし崩し的にWindowsが「標準」になってしまっているため、それに合わせる事が良い物を産む事に繋がると思われると困ります。
あと1つ、Linux上で動くメジャーアプリの殆どはWindowsに移植済みであるという点があえてLinuxを使う理由を無くしているというのがありますが、もともと「Linux専用」というソフトが乏しい(システムに密着した部分を除く殆どがマルチプラットフォーム)。Windowsに移植済みの物はここ数年で大分増えましたが、それ以前から他所のUnix系OSでも動いてましたし、元よりソフトウェアの存在価値が、あえてLinuxを使う理由になっているという事はないでしょう。