現状の普及率を考えて、万人に勧めてその殆どが得をする、あるいは何の問題もなく使えるとは言いきれないLinuxですが、私は使う価値もあると思いますし、試しに使ってみるのも良いとは思います。気軽に試せる1CD Linuxがありますからそちらで試せば特に痛手を被る事もないんじゃないかと。
そもそも私自身がLinuxを使っているため、意見がキツくなりがちです。何か不満や問題があるというわけではありませんが、正直言ってその程度しかないとも言えます。問題も不満もないし、自分の期待にはきちんと応えてくれるOS。そういうのが当り前だと思っているので、それ以外の部分が気になるわけです。私の場合はそれがデスクトップLinuxの今後であったりエンタープライズ市場のLinuxの今後であったりするわけです。
格別気に入ってるわけではありませんが、サーバー市場においては今更マイナーOSに区分する程しょぼい普及率でもないLinuxなので、そこで得た知識はどこかで活かしたくなるのが怠惰な人間というものです。たかがOSごときで新しい別の事を覚えたくない、今の知識を活かしたい当然の欲求なんじゃないかと思いますが、あくまで私の主観なのであてにはなりません。
今のところサーバー市場ではそれなりの競争があり、MSもそこへ力を注ごうという意思は見え隠れしているのですが、デスクトップ市場はそうではありません。活発な競争が起らない限りは、LinuxにもWindowsにも目紛しい進歩は望めないのではないかと思うので、ここは一つLinuxには頑張ってもらって噛ませ犬になるか、勝者にでもなってくれればいいです。どちらになるかは別に一向に構いません。結果的に良いものが手に入れば何の問題もありませんからね。
オープンソースソフトウェアに関しては、その運動そのものは消える事なく続いていくでしょうが、私が問題としているのは注目度です。ここ数年から現在にかけてオープンソース運動に協力する企業や国、自治体などが増えてきていますが、今後そういった動きが盛んになるか、横這い(現状のまま)か、廃れるかはわかりません。少なくともあと数年から10年の間はまだ協力者は増えるか減りはしないでしょうが、ある程度の伸びを見せたその後が問題だと思います。つまり協力して、中の人達も一生懸命がんばってくれたはいいが利益にならない、投資分が取り戻せない等といった問題があれば、それと同時に離れる人、それを見越して離れる人が出てくる事は予想できる事だと思います。また裁判等の争いに巻き込まれる危険性もまだあるために、単に協力してりゃ良い事があるというわけではありません。
また望ましい未来としては、特別な存在(良い意味でも悪い意味でも)である事からの脱却だと思います。もう一部ではオープンソースソフトウェアは当り前になっている分野もありますが、個人間においても極普通に利用されうる世界になるのであれば良いのではないかと。要するに普通になってくれと。妙に取り沙汰されたり注目されたりしてるうちは、まだ当り前の存在ではない、即ちまだ普及への道は遠いのではないかなと思います。正直、自分がそういう世界を望んでいるかは全くの別問題ですがね。
ちなみにOSという垣根は別としてください。Linux上でなきゃだめというわけではありません。
ほんとの意味での競争はその時点から始まるんじゃないでしょうかね。単純にイメージや普及率による影響によって物の良し悪しについて十分な検証がなされないままに競争以前に勝負がついてしまう事が多いのが現状であると私は認識しています。BeOSがその最たるものだと私は考えています。マイナーである事は市場での競争において最も厳しいハードルであって、そこを乗り越える事が最初の難関であり、BeOSはそこで屈っしました。
私は技術的な観点からの布教活動を前エントリで否定はしましたが、技術的な競争を望んでいないわけではありません。ただそれを行う土壌が現状にはない(失われた?)ので、やるだけ無駄だと言っているだけです。デスクトップ市場(あるいはPC市場)はもう飽和してるので終った、成熟しきった、あるいは市場に全く魅力がない、興味や旬は他に移った等といった感じの意見を耳にする事はありますが、正直これで満足ですか?OS X最強ですか?XP最強ですか?Linux/KDE最強ですか?私はどれもまだ先があるんじゃないかと思うわけですが、その先を見るにはもっと活発な技術競争が必要だと思うんですよ。
でなければ、技術競争には優位と思われるオープンソースの開発モデルは本格的に役立つ事もないんじゃないかと。ちなみに一時期のQemuがオープンソースの開発モデルの凄さを見せつけました。もうもの凄いペースであれやこれやと実装されていく様はすさまじいです。これをプロプライエタリな通常の開発手法でやれと言われても金がかかって仕方ないと思います(会社の規模が大きい程に)。私が現在のソフトウェア産業に何を望むか、というのはオープンである無しに関わらず、Qemuのような劇的な進歩です。そうでなければ面白くないし、我々にとって特別な恩恵もないままですからね。使うからには便利に、そして快適に。その対象となるOSは何でもいいわけですし、全部でもいいわけです。どれが便利で快適な環境の基盤となっても、我々にとっては有難い話で、四の五の言わずにそのOSを使えば良いわけですから、別になんだって構いません。
で、今のところその競争はまだ起ってないんですが、その起爆剤となりえそうな可能性があるかもしれないのがLinuxだと私は思ってます。曖昧な言い回しは非常に不確定要素が強いのと、たださえ後追いをせざるをえない身のLinuxとしてはどうしても厳しいという事があるからです。結果は別にどうなろうと構いませんが、このまま勝手に消えられるのだけは避けてほしいところ。せめてあぐらかいてふんぞり返ってるMSを立ち上がらせるくらいの事はしていってもらわないと我々にとっては、ほんとに無料のOSってだけで終っちゃいますからね。